お菓子とキリスト教の祝日はとても密接な関係があります。キリスト教の祝日にもお菓子はつきものです。昔、民衆を異教からキリスト教に改宗させるために、お菓子を食べる習慣を利用しました。
イベントの時期が近づくと街中がお菓子でいっぱいになります。地方によって由来は同じだけど異なるお菓子があることも注目です。
フランスのキリスト教の祝日とお菓子の関係をまとめました。
エピファニー Épiphanie
エピファニー Épiphanieは東方から来た三博士がイエス・キリストの生誕を世に知らしめて祝った日で、毎年1月6日にあたります。日本語では「公現祭」といわれます。最近は1月最初の日曜日がエピファニーの祝日にあたります。
フェーブという陶器の人形の入ったガレット・デ・ロワやガトー・デ・ロワというお菓子を食べる習慣があります。
シャンドルール Chandeleur
2月2日のシャンドルール Chandeleurは「聖母マリアのお清めの日」を意味し、キリスト誕生の40日後に聖母マリアが清めのために神殿に詣でたことに由来しています。フランスではこの日にクレープを焼いて食べるという習慣があります。昔、丸くて黄金色のクレープは太陽を象徴しており、春の到来を願って作られていました。
南フランスのマルセイユではこの時期にナヴェットを食べる習慣があります。
サン=ヴァランタン Saint-Valentin
サン=ヴァランタン Saint-Valentinは2月14日の聖バレンタインのことです。3世紀、ローマ皇帝のクラウディウス2世の結婚禁止令を無視し、兵を結婚させた司祭ヴァランタンが処刑された日に由来します。
チョコレートを贈るという習慣はイギリスのカドバリー社がはじめ、日本では女性が男性にチョコレートを贈るというイベントが広まりました。フランスでは恋人やカップルが花やお菓子を贈り合ったり、レストランへ食事に行くことが多いようです。
カルナヴァル Carnaval
カルナヴァル Carnavalとは日本語では「謝肉祭」といい、四旬節の前に行われる行事です。節食と肉を食べてはいけない期間である四旬節の前に、たくさん食べて大騒ぎしておこうというお祭りのこと。固定の日程は決まっておらず、毎年日にちが変わる移動祝祭日ですが、2月から4月の間に行われます。
このカルナヴァルの間に生地を揚げたお菓子食べ、フランス各地に名前が異なるけど同じ揚げ菓子があります。
- フリヴォル Frivolles (揚げ菓子)
- オレイエット Oreillettes (揚げ菓子)
マルディ・グラ Mardi gras
マルディグラ Mardi grasは「肥沃な火曜日」といい、カルナヴァルの最終日の火曜日にあたります。カルナヴァルの中でもこのマルディグラの日がもっとも盛り上がり、多いに飲み食いして、仮面をつけて踊ったりして楽しみます。マルディグラが終わると四旬節と言う摂食の期間が始まります。
その節食の期間に備えるため、カルナヴァルからマルディグラまでの間にたくさん食べておくために油で揚げたエネルギーの高いお菓子を食べる習慣がありました。今では摂食の規則はなくなりましたが、揚げ菓子を食べる習慣は残っています。
- ビューニュ Bugne
- メルヴェイユ Merveille
- ブーニェット Bougnettes
四旬節 Carême
四旬節はカレーム Carêmeといい、灰の水曜日から復活祭までの40日間の肉断ちと節食の期間のことをいいます。本来は46日間ですが、日曜日は休息日のためカウントせず40日となります。
もともとは肉や卵を食べてはいけない決まりでしたが、中世以降になると野菜や卵、油や鴨肉が許されるようになり、衣をつけて揚げた料理を食べるようになりました。
昔、来日したポルトガル人が揚げ物を日本に伝えたことにより、天ぷらが広まったと言われています。
- ボトゥロ Bottreau
- クロキニョル Croquignole
- フリテレ Fritelle
- グリーユ Guenille
- トゥルティソ Tourtisseaux
復活祭 Pâques
復活祭は四旬節がはじまって40日経った春分後の最初の満月の次の日曜日におこなわれます。弟子のひとりに裏切られ十字架にかけられて処刑されたキリストが、3日後に復活したのを祝う日です。キリスト教の行事の中でもっとも重要な祭日で、卵は生命の誕生、うさぎは子供をたくさん産むため豊かな生命の象徴とされています。
復活祭はフランスでパック Pâquesと言い、カルナヴァルから復活祭までの行事は毎年日程が異なる移動祝日になります。
四旬節には鶏が産みためた卵を消費するために、卵を大量につかうお菓子や料理を作ります。余った卵の殻は絵を描いたりして飾りに使います。
現在では卵やうさぎ、鶏の形をしたチョコレートが定番で、パティスリーやスーパーにたくさん並んでいます。この時期はお菓子やさんにとって最もチョコレートが売れる時期になります。
アルザス地方ではアニョー・パスカルという羊の形をしたお菓子を食べる習慣があります。
精霊降臨祭 Pentecôte
キリストが復活したあと、弟子たちのもとへ精霊が降りた日が精霊降臨祭になります。復活祭の7週間後の日曜日にあたります。フランス語でパントコートPentecôteと言います。
精霊を象徴する白いハトをモチーフとしたコロンビエというお菓子を食べる地域もあります。
スズランの日 Fête du muguet
スズランの日はフェット・デュ・ミュゲ Fête du muguetと呼ばれています。Muguetはフランス語でスズランという意味です。スズランは春が来たことを知らせる花で、古代より春のシンボルで、幸せを呼ぶ花とされていました。
1561年5月1日、シャルル9世は幸運をもたらすとして贈られたスズランをたいへん気に入りました。それから毎年同じ日にスズランをご婦人たちに贈るようになりました。
19世紀末になると、庶民もスズランを贈り合うようになりました。現在でも5月が近づくとスズランが街角に並び、愛する人にスズランを贈るという習慣が残っています。
このスズランの日に食べるお菓子というものはありませんが、パティスリーにはスズランや春をイメージするお菓子やチョコレートが並んでいます。
ハローウィン Halloween
毎年10月31日にあたるハローウィン Halloweenは、元々は古代ケルト人が祝っていた祭りのことで、現在ではアメリカをはじめ多くの国で定着しています。
悪魔を崇拝し、生贄を捧げる祭りでしたが、今では宗教的な意味はなくなっています。かぼちゃの中身をくり抜いてジャック・オー・ランタンJack-o’-lanternを作ったり、子供たちはお化けや魔女の仮装をしてお菓子をもらいに行く習慣があります。今では子供だけでなく、大人も仮装して街をねり歩くイベントが行われています。
諸聖人の日 Toussaint
諸聖人の日はフランスではトゥサン Toussaintといい、その名の通り「全ての(tous)聖人(Saint)」を祝うカトリックの祝日のことです。
パリ近郊のプロヴァンでは二フレット Niflette、南フランスではパヌレ Pannelets、他の地域でも様々なお菓子がこの時期に作られています。
- ニフレット Niflette
- パヌレ Pannelets
アヴァン Avent
アヴァン Aventとはイエス・キリストの誕生を待ち望む期間のことで、11月末から12月24日までを指します。アドベント Advent のことで、日本では「待降節」「降臨節」と言います。
クリスマスはフランスの人々にとって大切な行事で、家族で集まってごちそうを食べます。アヴァンはクリスマスを待ち望んでいる期間のことです。11月くらいからクリスマスまでの間に食べられる特別なお菓子がたくさんあります。
- べラヴェッカ Berawecka
- ブレデル Bredele
- ノネット Nonnette
- パンデピス Pain d’épices
- トリュフ Truffes
- シュトレン Stollen
- シュクルドルジュ Sucre d’orge
聖人ニコラの日 Saint-Nicolas
12月6日は聖人ニコラを祝う日のことで、フランス語でサン=ニコラ(Saint-Nicolas)と言います。サン=ニコラはサンタクロースのモデルになっている人物のことです。
主にアルザスを中心とするフランス北東部、ベルギー、ルクセンブルグ、ドイツ、オーストリア、スイスといった北ヨーロッパで祝われています。
昔、ニコラが子供たちを助けたという伝説に由来しています。それ以来、ニコラはこどもの守護聖人として崇められています。12月5日の夜から6日にかけて、子どもたちは成人ニコラのロバにえさを与えるために、靴下に干し草とオート麦のパンをいっぱいに詰めて煙突にぶら下げました。これがクリスマスに枕元に靴下を置いておく由来となっています。
4世紀には聖人ニコラの形を模したアニス風味のビスキュイやパンデピスで祝っていました。現在では聖人ニコラはチョコレートや赤いアイシングクリームで描かれることもあります。
アルザス地方ではマナラという人形の形をしたブリオッシュを食べて祝う習慣があります。
クリスマス Noël
12月25日のクリスマスはフランス語でノエル Nöelといい、家族で集まって食事をする1年でもっとも大切なイベントです。
クリスマスの定番ケーキは薪の形をしたビュッシュ・ド・ノエルがあり、南フランスではトレーズ・デセールという甘く煮たフルーツやヌガーなど13種類のお菓子を食べる伝統もあります。
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