クリームはフランス語でクレーム Crèmeといい、お菓子作りには欠かせない存在です。基本のクリームは数が限られていて、基本のクリームに他の材料をプラスすることでアレンジしています。フランス菓子であつかうクリームについて説明します。
クレーム Crèmeは「生クリーム」のことも意味します。
基本のクリーム
基本のクリームは以下の4つに分けられます。
- クレーム・パティシエール Crème pâtissière
- クレーム・フォユテ Crème fouettée
- メラング・イタリエンヌ Meringue italienne
- クレーム・ダマンド Crème d’amande
クレーム・パティシエール Crème pâtissière
クレーム・パティシエール Crème pâtissièreとはカスタードクリームのことです。クレーム・パティシエールとは「パティスリーのクリーム」という意味で、その名の通りフランス菓子で最も基本のクリームです。クレーム・パティシエールを元にして、他の素材と合わせアレンジしたクリームも多数あります。タルトやエクレア、ミルフィーユなど様々な菓子に用いられます。
[材料]
牛乳/卵黄/砂糖/コーンスターチ
クレーム・フォユテ Crème fouettée
クレーム・フォユテ Crème fouettéeは生クリームを泡立てたクリームのことです。日本ではホイップクリームと言います。クレーム・フォユテに砂糖を加えてタルトなどに添えたり、フォレノワールのクリームとして用いられます。他のクリームに軽さを出すために加えてアレンジすることもあります。
[材料]
生クリーム
ムラング・イタリエンヌ Meringue italienne
ムラング・イタリエンヌ Meringue italienneは泡立てた卵白に115℃に熱したシロップを加えて混ぜたメレンゲです。泡がつぶれにくくしっかりとかたいメレンゲとなります。マカロンなどのメレンゲ菓子の生地として用いたり、軽さを出すために他のクリームと混ぜて用います。
[材料]
卵白/水/砂糖
クレーム・アマンド Crème d’amande
クレーム・アマンド Crème d’amandeはアーモンドパウダーをベースにしたクリームで、火を通して用いるのが特徴です。日本ではアーモンドクリームと言います。タルト生地に敷いて焼いたり、フォユテ生地(パイ生地)の中に詰めて用います。
[材料]
バター/砂糖/アーモンドプードル/卵/小麦粉
クレーム・パティシエールがベースのクリーム
クレーム・パティシエールをベースにしたクリームのアレンジです。これらのクリームもフランス菓子でも基本のクリームです。
以前はクレーム・パティシエールに大量のバターを加えて作るクリームが多かったのですが、現在ではバターの割合が減ったり、代わりにクレーム・フォユテやメラングを加えて軽さを出すクリームが主流になってきつつあります。
クレーム・ムースリーヌ Crème mousseline
クレーム・ムースリーヌ Crème mousselineはクレーム・パティシエールにバターを加えて作ります。日本では「ムースリーヌクリーム」と呼んでいます。冷やしたクレーム・パティシエールにポマード状のバターを加えてあわ立てて、空気を含ませて作ります。トロペジェンヌやパリブレストなどのアントルメのクリームとして用います。
[材料]
牛乳/卵黄/砂糖/コーンスターチ/バター
クレーム・シブースト Crème Chiboust
クレーム・シブースト Crème Chiboustはクレーム・パティシエールにムラング・イタリエンヌを加えて作るクリームです。タルト・シブーストやサン=トノレなどのアントルメに用います。
[材料]
牛乳/卵黄/砂糖/コーンスターチ/卵白
クレーム・サン=トノレ Crème Saint-Honoré
クレーム・サン=トノレ Crème Saint-Honoréとはクレーム・パティシエールにムラング・イタリエンヌを加えて作るクリームです。サン=トノレに用います。クレーム・シブーストと同じクリームです。
[材料]
牛乳/卵黄/砂糖/コーンスターチ/卵白
クレーム・ディプロマット Crème diplomate
クレーム・ディプロマット Crème diplomateはクレーム・パティシエールにクレーム・フォユテを加えて作るクリームです。食感が軽めになるためクレーム・レジェール Crème légèreともいいます。タルトに敷いたり、アントルメのクリームとして用います。
[材料]
牛乳/卵黄/砂糖/コーンスターチ/生クリーム
クレーム・ア・フラン Crème à flan
クレーム・ア・フラン Crème à flanとはフランに加えるクリームのことです。牛乳や卵で作る液に小麦粉などのデンプンを加えて焼き、粘りがついてもちもちとしています。クレーム・パティシエールに近い味です。
生地を敷いたタルト型にクレーム・ア・フランを流して焼いたのがフランとなります。アプリコット、バナナ、さくらんぼ、ブルーベリー、洋梨などの生フルーツやシロップ漬け、コンフィやドライフルーツを加えて作ることもあります。
[材料]
牛乳/グラニュー糖/全卵/デンプン、小麦粉、コンスターチ/バニラ
クレーム・アングレーズ Crème anglaise
クレーム・アングレーズ Crème anglaiseは牛乳や卵黄、砂糖で作るクリームです。クレーム・パティシエールと同じ作り方ですがコーンスターチを加えず、さらっとした軽い濃度がついています。イル・フロッタントのクリームやタルトなどに添えられるクリーム、アイスクリームのベースとして用いられます。
[材料]
牛乳/卵黄/砂糖
クレーム・バヴァロワーズ Crème bavaroise
クレーム・バヴァロワーズ Crème bavaroiseはクレーム・アングレーズにクレーム・フォユテを混ぜ合わせ、ゼラチンを加えて冷やし固めるクリームです。「ババロア」のことです。フランス菓子ではシャルロットの土台として用います。
[材料]
牛乳/卵黄/砂糖/生クリーム/ゼラチン
クレーム・フォユテがベースのクリーム
クレーム・フォユテをベースにしたクリームのアレンジです。軽さを出すためにクレーム・フォユテを加えることがあり、今では多く用いられているクリームです。
クレーム・シャンティイ Crème Chantilly
クレーム・シャンティイ Crème Chantillyはクレーム・フォユテに砂糖を加えて泡立てるクリームです。目安としては脂肪分30%以上の生クリームをもちい、生クリームの10%の量の砂糖を加えて作ります。
クリームやムースの土台、タルトに添えるクリームとして用います。フランスには日本のような生クリームを塗ったショートケーキはほとんど見られません。(例外:フォレノワール)
[材料]
生クリーム/砂糖
前述のこれらのクリームもクレーム・フォユテを加えて作ります。
- クレーム・ディプロマット Crème diplomate
- クレーム・バヴァロワーズ Crème bavaroise
メラング・イタリエンヌがベースのクリーム
メラング・イタリエンヌをベースにしたクリームのアレンジです。こちらも軽さを出すためにクレーム・フォユテを加えることがあり、今では多く用いられているクリームです。
クレーム・オ ・ブール Crème au beurre
クレーム・オ ・ブール Crème au beurreはあわ立てた卵に115℃に熱したシロップを加えて(メラング・イタリエンヌ)泡立て、バターを加えて作るクリームです。ビュッシュ・ド・ノエル、オペラ、モカ、ルリジューズなどのフランス菓子に用いられます。重いバタークリームに軽さを出すためにメレンゲを加えます。
[材料]
全卵/水/砂糖/バター
アパレイユ・ア・ボンブ Appareil à bombe
アパレイユ・ア・ボンブ Appareil à bombeはあわ立てた卵に115℃に熱したシロップを加えて(メラング・イタリエンヌ)作るクリームのことです。アイスクリームやムースの土台となるクリームです。
[材料]
全卵/水/砂糖
前述のこれらのクリームもメラング・イタリエンヌを加えて作ります。
- クレーム・シブースト Crème Chiboust
- クレーム・サン=トノレ Crème Saint-Honoré
クレーム・ダマンドがベースのクリーム
クレーム・フランジパンヌ Frangipane
クレーム・フランジパンヌ Frangipaneはクレーム・パティシエールとクレーム・ダマンドを合わせたクリームで、生地とともにオーブンで焼いて用います。タルトに敷いて土台として用いたり、ガレット・デ・ロワなどのパイ生地に詰めます。
[材料]
牛乳/卵黄/砂糖/コーンスターチ/バター/アーモンドプードル/卵/小麦粉
その他のクリーム
上記以外にも様々なクリームがあります。
ガナッシュ Ganache
ガナッシュは生クリームとチョコレートを加えて作るクリームです。タルトの土台にしたり、ボンボン・オ ・ショコラの中身として用います。基本的にはチョコレートと生クリームのみですが、牛乳や卵黄などを加えるアレンジもあります。
[材料]
生クリーム/チョコレート
クレーム・オ ・シトロン Crème au citron
クレーム・オ ・シトロン Crème au citronはレモン汁をベースにした冷やし固めて作るクリームです。タルト・オ・シトロンのクリームとして用いたり、レモン風味のマカロンの詰め物として用います。
[材料]
レモン汁/砂糖/卵/ゼラチン/バター
クリームの組み合わせまとめ
上記のクリームの組み合わせをまとめました。それぞれのクリームを足し算・引き算することで組み合わせています。
クレーム・パティシエールの組み合わせ
クレーム・パティシエール + バター = クレーム・ムースリーヌ
クレーム・パティシエール + メラング・イタリエンヌ = クレーム・シブースト
クレーム・パティシエール + メラング・イタリエンヌ = クレーム・サン=トノレ
クレーム・パティシエール + クレーム・フォユテ = クレーム・ディプロマット
クレーム・パティシエール ≒ クレーム・ア・フラン
クレーム・パティシエール – デンプン = クレーム・アングレーズ
クレーム・パティシエール – デンプン + ゼラチン + クレーム・フォユテ = クレーム・バヴァロワーズ
クリーム・フォユテの組み合わせ
クレーム・フォユテ + 砂糖 = クレーム・シャンティイ
クレーム・フォユテ + クレーム・パティシエール = クレーム・ディプロマット
クレーム・パティシエール – デンプン + ゼラチン + クレーム・フォユテ = クレーム・バヴァロワーズ
メラング・イタリエンヌの組み合わせ
メラング + バター = クレーム・オ ・ブール
メラング + クレーム・パティシエール = クレーム・シブースト
メラング + クレーム・パティシエール = クレーム・サン=トノレ
クレーム・ダマンドの組み合わせ
クレームダマンド + クレーム・パティシエール = クレーム・フランジパンヌ