フランスは現在でも美食の国として有名ですが、その中でもお菓子の文化は特に輝かしいものです。
フランスの王様や貴族の生活は、お菓子の歴史に大きな影響を与えています。また、外国との政略結婚や貿易によって砂糖やチョコレートが輸入されるようにもなりました。外国からやってきた貴重な材料によってお菓子の幅は飛躍的に広がりました。
さらに、技術の発展もお菓子の進化を促しました。氷菓や美しいアントルメなど、革新的なお菓子が生み出されるようになりました。新しい技術と創造力が結びつき、王様や貴族のための美食体験が繊細で洗練されたお菓子として表現されました。
こうして、フランスの王様や貴族の生活と外国との貿易、技術の進歩が結びつき、お菓子の世界は新たな領域に進んでいきました。
この記事ではフランスのお菓子の歴史を時代ごとにまとめました。史実とともにその年に誕生した(と言われている)お菓子の名称、お菓子に関する事実を書いています。中世時代から近世時代、近代、現代までの歴史と共に登場するお菓子をまとめました。
これでフランスのお菓子の進化がわかるのではないでしょうか。
フランス中世時代のお菓子年表
フランスの中世時代の史実とお菓子に関する歴史をまとめました。
フランスの中世時代として、481年のメロヴィング朝フランク王国から1498年のヴァロワ=オルレアン朝フランス王国までを定義しています。
中世時代には砂糖が普及しておらず、蜂蜜や果物で甘味をつけていました。
お菓子が誕生した年はいくつかの説があるため、お菓子の名前が重複しています。
メロヴィング朝
481年 | メロヴィング朝フランク王国クローヴィスが戴冠 |
496年 | キリスト教カトリックに改宗 |
732年 | カール・マルテルがトゥール・ポワティエの戦いにてイスラーム勢力を撃破 |
中世初期のころ、キリスト教関連の文献にエウロギアやウーブリというお菓子の名前が登場しています。5世紀にはユリウス2世が王の祭り(Fête des Rois)を1月6日に設定しました。
カロリング朝
751年 | ピピン3世がカロリング朝フランク王国を創始 |
754年 | ピピン3世が教皇ステファヌス2世より戴冠 |
791年 | コルメリーCormeryでマカロンが作られはじめる |
800年 | シャルルマーニュ大帝が教皇レオ3世にローマ皇帝として戴冠/1年の初めはクリスマスに設定 |
910年 | ブルゴーニュ地方にクリュニー修道院が設立 |
911年 | ノルマンディー公国が創設 |
カペー朝
987年 | ユーグ・カペーがフランス王に選出、カペー朝創始 王権の基盤が弱く、各地の諸侯やノルマンディー公家がほとんどの領土を支配、カペー朝はイルドフランスのみを抑えるのみだった |
1004年 | ブルゴーニュ公国を併合 |
1000-1300年 | 1年の初めは復活祭の日に設定される |
1096年 | 十字軍開始(~1270) 十字軍がイスラム圏より香辛料や砂糖を持ち帰る |
1180年 | フィリップ2世(尊厳王)即位 領土を拡大し、パリの城壁やルーブル宮殿を建設、フランス王国の基礎を築く |
1185年 | パリにレ・アール中央市場を建設(~1969) |
1214年 | ブーヴィーヌの戦いに勝利 アンジュ、ブルターニュ、メーヌ、ノルマンディー、トゥーレーヌの土地を得る |
1270年 | ウブロワイエ(ウーブリ職人:パティシエの元祖)が同業者リストに掲載される |
1309年 | 教皇庁をローマからアヴィニョンに移転 |
カペー朝に誕生したお菓子
10世紀〜12世紀のカペー朝に誕生したお菓子の一覧です。年代がはっきりしていません。
- プディング Pudding(の元になったもの)または、タイリス taillis
- ウブリエ oublies
- ゴーフル gaufres
- エショデ échaudés
- ジャンブレット gimblettes
- ニウール nieules
ヴァロワ朝
1328年 | フィリップ6世が即位、ヴァロワ朝創始 |
1337年 | イギリスと百年戦争開始(~1453) |
1343年 | 教皇クレメンス6世がアプトに砂糖職人オージア・マセト(Ausias Maseto)を任命 |
1356年 | ポワティエの戦いでイギリスに大敗する |
14世紀半ば | ベスト(黒死病)が大流行し、人口の約1/3が死亡 |
1370年頃 | タイユヴァン「ヴィアンディエ(植物譜)」出版 |
1393年 | 「メナジェ・ドゥ・パリ(パリの家政の書)」著者不明 |
1429年 | ジャンヌ・ダルクの登場、オルレアンを解放 |
1440年 | パティシエの同業組合ができる ユニコーンがウブリエ職人のシンボルとなる |
1348年 | サヴォワ伯の料理人ピエール・ド・イエンヌによってガトー・ド・サヴォワが作られる |
1462年 | グージェール gougère de Villon /プープラン poupelin が作られる |
1494年頃 | ハプスブルク家とイタリアを巡って戦争(~1559頃) |
1498年 | ヴァロワ家シャルル8世が死去し、ヴァロワ家は断絶 |
ヴァロワ朝に誕生したお菓子
13世紀〜15世紀のヴァロワ朝に誕生したお菓子の一覧です。年代がはっきりしていません。
- タルト・オ ・ポム tarte aux pommes de Taillevent
- フラン flan / flaon
- タルムーズ talmouses
- ダリオル darioles
- リ・オ・レ riz au lait de Saint Louis
- ガトー・ド・サヴォワ gâteau de Savoie
- パット・フォユテ pâte feuilletée
- ガトー・デ・ロワ Gâteau des Roisがエピファニー(1月6日)に食べられるようになる
- パンデピス pain d’épices: 貴族や修道院にて広まる
フランス近世時代のお菓子年表
フランスの近世時代の史実とお菓子に関する歴史をまとめました。
1498年のヴァロワ=オルレアン朝フランス王国から1792年のブルボン朝の王権が停止されるまでをフランスの近世時代としています。
ヴァロワ=オルレアン朝
この16世紀からはフランスのルネサンス時期となります。
1498年 | ヴァロワ=オルレアン家のルイ12世が即位 |
1515年 | フランソワ1世即位、フランスの芸術や文化が大きく発展(ルネサンス)
レオナルド・ダ・ヴィンチをアンボワーズ城に招く |
1533年 | メディチ家のカトリーヌ・ド・メディシスがアンリ2世に嫁ぐ |
1534年 | ブルトン人のジャック・カルティエがカナダを発見 |
1547年 | アンリ2世が王位に就く(~1559) |
1566年 | パティシエが宴会と結婚披露宴の料理を独占する |
1559年 | フランスの宗教戦争始まる(~1589) |
1572年 | サンバルテルミの虐殺(カトリックとプロテスタントの対立) |
1574年 | アンリ3世が即位(~1589) |
1589年 | アンリ3世がパリで暗殺され、ヴァロワ断絶 |
ヴァロワ=オルレアン朝に誕生したお菓子
16世紀のヴァロワ=オルレアン朝に誕生したお菓子の一覧です。年代がはっきりしていません。
-
- クレーム・フランジパンヌ crème frangipane
- クレーム・フォユテ crème fouettée
- ブリオッシュ brioche
- ガトー・デ・ロワ gâteau des Rois
ブルボン朝
1589年 | アンリ4世即位(~1610) |
1598年 | ナントの勅令を出し、ユグノー戦争が終結 |
1610年 | ルイ13世が即位(~1643) |
1615年 | スペイン王女アンナ・ドートリッシュがルイ13世に嫁入りする
チョコレートがフランスに伝わる |
1618年 | 三十年戦争(~1648)東部の領土を拡大 |
1643年 | ルイ14世(太陽王)が即位(~1715) |
1650年 | タルトレット・アマンディーヌ(tartelette amandine de Ragueneau)が作られる |
1653年 | ラ・ヴァレンヌが『フランスの菓子職人』出版 トルトー・ウッフ・オ ・ポム(卵とりんごのパイ)tourte d’oeufs aux pommes クレーム・パティシエール crème pâtissière マカロン Macarons ショソン・オ ・ポム chausson aux pommes |
1659年 | 西仏戦争に勝利し、スペインからカタルーニャ北部とフランドルの一部を獲得 スペインの没落が明らかとなる |
1660年 | スペイン王女マリー・テレーズがルイ14世に嫁入りする さらにチョコレートが伝わる |
1668年 | アーヘンの和約によりネーデルラント継承戦争終結 スペインよりリールなどフランドルの都市を譲渡 |
1670年頃 | マルティニック島Martiniqueでカカオの木の栽培が始まる |
1682年 | ヴェルサイユ宮殿が完成する |
1683年 | クロワッサン croissants クレーム・ブリュレ crème brûlée de Massilot |
1686年 | パリに最初のカフェ(ル・プロコープ)が開店 |
1691年 | メレンゲ Meringues de Massilot |
1692年 | フランソワ・マシャロが『ジャム、リキュール、フルーツに関する新教本』を出版。初のイラスト入りレシピ本で、砂糖を使ったレシピが多数掲載 |
17世紀末 | アンティル諸島Antillesでサトウキビのプランテーション始まる |
1715年 | ルイ15世(最愛王)即位(~1774) |
1725年 | マリー・レクザンスキがルイ15世に嫁入りし、クグロフがフランスに伝わる |
1730年 | レクザンスキ王を通してババが伝わる |
1737年 | スタニスラス・レクザンスキ王がロレーヌ公となる(~1766) ピュイ・ダムール puits d’amour de Vincent la Chapelle |
1738年 | ウィーン条約によりポーランド継承戦争集結 ロレーヌ公国とバール公国を獲得 |
1739年 | アリュメット Allumettes ビスキュイ・ア・ラ・キュイエール biscuits à la cuillère ビスキュイ・ド・ショコラ biscuits de chocolat de Menon |
1755年頃 | コメルシーComercy のスタニスラス王の城でマドレーヌが誕生した |
1756年 | 七年戦争が始まる(~1763) |
1760年 | 王立チョコレート工場Chocolats Lombart をパリに設立 アミアンのマカロン Macaron d’Amiensが作られる |
1763年 | パリ条約によりイギリスにカナダとフランス領ルイジアナを譲渡 |
1770年 | マリー・アントワネットとルイ・オギュースト(後のルイ16世)が結婚 クグロフやクロワッサンが伝わる |
1774年 | ルイ16世即位(~1792) |
1789年 | フランス革命(~1799) |
1792年 | ナンシーNancy でマカロンが広まる(ナンシーのマカロン) |
1793年 | ルイ16世、マリー・アントワネットがギロチンで処刑される |
フランス近代時代のお菓子年表
フランスの近代時代の史実とお菓子に関する歴史をまとめました。
便宜上、1792年の第一共和制開始から1992年の欧州連合(EU)が設立されるまでをフランスの近代時代とします。
第一共和政
1792年 | 王権停止、第一共和政はじまる ナンシーでマカロンが広まる |
1794年 | テルミドールのクーデター |
1795年 | 総裁政府が成立 |
1796年 | 『フリアンディーズの手引き』出版 |
1799年 | ナポレオンが執政となる |
1803年 | フランス領ルイジアナをアメリカに売却し、北米大陸から撤退 グリモ・ド・ラ・レニエールにより『食通年間』出版 |
18世紀後半に誕生したお菓子
18世紀後半に誕生したお菓子の一覧です。年代がはっきりしていません。
- ペ・ド・ノナン pets-de-nonnain
- シャルロット charlotte
18世紀後半のフランス革命以降、パリに多くのレストランが開店する。
第一帝政
1800年 | パン・ド・ジェーヌ pain de Gênes |
1804年 | ナポレオンが皇帝に戴冠される |
1807年 | マンケ manqué ミルフィーユ mille-feuille |
1808年 | イギリスに対する大陸封鎖開始 |
1810年 | リ・ア・ランペラトリス riz à l’Impératrice |
19世紀の初め、アントナン・カレームが活躍する。
王政復古
1814年 | ナポレオンの退位し、ルイ18世がフランス王に即位 クロカンブッシュ croquembouche de Beauvilliers ムース mousse glacée de Carême |
1815年 | ワーテルローの戦いでナポレオンが敗北する アントナン・カレームが『パリの王室菓子職人』を出版 バヴァロワーズ bavaroise スフレ soufflé プチ・フール petits-fours de Carême |
1821年 | ナポレオンが死去する |
1822年 | ディプロマット Diplomate |
1826年 | ブリヤ=サヴァランが『味覚の生理学』を出版 |
七月王政
1830年 | 七月革命 ルイ=フィリップがフランス王になる |
1815年 | ワーテルローの戦いでナポレオンが敗北する アントナン・カレームが『パリの王室菓子職人』を出版 |
1821年 | ナポレオンが死去する |
1839年 | メキシコと菓子戦争がはじまる |
1840年 | フラン・ムラング flan meringué サン=トノレ saint-honoré |
1843年 | ピュイ・ダムール puits d’amour クロカンブッシュ croquembouche de Carême |
1845年 | サヴァラン savarin |
1846年 | パリでサン=トノレが誕生 |
第二共和政
ルイ・ナポレオンが大統領になる
1848年 | 二月革命によりルイ=フィリップが亡命し、第二共和政開始 |
1850年 | ブルダルー bourdaloue エクレール éclair |
1851年 | ルイ・ナポレオンによるクーデター フランス皇帝ナポレオン3世に即位 ルリジューズ religieuse |
第二帝政
1852年 | ナポレオン3世により第二帝政開始 サブレ sablé de Lisieux |
1853年 | セーヌ県知事オスマンによるパリの大改造はじまる |
1855年 | マラコフ malakoff ビスキュイ・ド・ジェーヌ biscuits de Gênes |
1857年 | 新しいパリ中央市場建設が始まる モカ moka クレーム・オ ・ブール crème au beurre |
1860年 | サヴォワとニースがサルデーニャから割譲 キャトル・カール quatre-quarts |
1862年 | ナントに最初のプチブール工場が設立 |
1864年 | ポワール・ベル・エレーヌ poire belle Hélène |
1867年 | オムレット・ノルヴェジエンヌ omelette norvégienne ミルフィーユ mille-feuille |
1870年 | 普仏戦争がはじまる ナポレオン3世が捕虜になる |
第三共和政
1870年 | 第三共和政がはじまる |
1871年 | パリ・コミューン |
1879年 | クリーム分離器が発明される |
1880年 | ケイク cake |
1887年 | フランス領インドシナ成立 エッフェル塔の建設はじまる ヴァシュラン vacherin |
1888年 | フィナンシェ financier |
1890年 | タルトタタン Tarte TATINが誕生 サランボ salammbô |
1891年 | パリブレスト Paris-Brest |
1894年 | ドレフュス事件 ペッシュ・メルバ pêche Melba |
1896年 | クレープ・シュゼット crêpe Suzette |
1914年 | 第一次世界大戦はじまる |
1915年 | フォレノワール Fôret noireが考案される |
1919年 | ヴェルサイユ条約によりアルザスとロレーヌが仏領に復帰 |
1939年 | 第二次世界大戦はじまる |
1940年 | ヴィシー政権成立 |
第四共和政
1946年 | 第四共和政はじまる |
1954年 | ベトナムが分割され、フランスの植民地解体 アルジェリア戦争がはじまる |
20世紀のベルエポック時代に誕生したお菓子
20世紀に誕生したお菓子の一覧です。年代がはっきりしていません。
- イル・フロッタント île flottante
- オペラ opéra
- レーヌ・ド・サバ reine de Saba
- フレジエ fraisier
第五共和政
1958年 | 第五共和政はじまる シャルル・ド・ゴールが大統領となる |
1962年 | アルジェリアがフランスから独立 |
1974年 | ヴァレリー・ジスカール・デスタンが大統領に就任 リヨンの「ベルナション」にてプレジダン Presidentが誕生 |
1981年 | フランソワ・ミッテランが大統領に就任 ショックフリーザーの導入されムースが流行 |
フランス現代時代のお菓子年表
フランスの現代時代の史実とお菓子に関する歴史をまとめました。
便宜上、1992年の欧州連合(EU)が設立されてから現在までをフランスの現代時代とします。
1992年 | 欧州連合(EU)が設立 |
1995年 | ジャック・シラクが大統領に就任 |
1998年 | FIFAワールドカップにて初優勝 |
2002年 | ユーロ導入 |
2007年 | ニコラ・サルコジが大統領に就任 |
2012年 | フランソワ・オランドが大統領に就任 |
2017年 | エマニュエル・マクロンが大統領に就任 |
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